彼女がその名を知らない鳥たち〜蒼井優

日本映画

これは愛の物語ではない

ネタばれ注意。

最後にどんでん返しがありますが、そこを無償の愛と捉えた方もいらっしゃるでしょう。けれど、わたしは異議を唱えます。

あんなのは、自分の無価値感を埋める、自己犠牲です。

本当に愛しているなら、罪を償わせて出所を待つのが愛でしょう。

そして、最後のシーンで愛だって泣いちゃう人にも引いてしまいます。

まあ、わたしもちょっと感傷的になりましたけど。

そりゃ死んじゃった方が楽でしょ。

生まれ変わって彼女のお腹の中に宿って、今度は幸せにしてねって、究極の現実逃避ですね。

子供産んで幸せになって、次は子供に依存ですか?

無価値感のストーリー

主人公の十和子は、過去の素敵な恋愛が忘れられない。

竹ノ内豊演じる、イケメンで実業家の黒崎との甘い生活を思い出しながら8年の時が過ぎている。

甘い過去に取り憑かれている一方で、現実は同居人の冴えない50前の阿部サダヲ演じる、佐野さん。

見た目もマナーも話題も下世話な、下品なおっさんです。

十和子は、毎日彼を蔑み罵倒しながら、彼のお金で養われて、家事もしないでぼんやり過ごしている。

佐野さんは現場の仕事から帰り次第、夕食の準備にとりかかり、十和子のマッサージをしてから別の部屋で邪魔にならないように寝る。

ここまで見たところで、

「佐野さん、何て良い人なの❣️」

とは、思わない。なんで嫌われながら一緒に住んでいるんだろうか?子供もいないし、十和子はまだ若い。

頭の中が❓でいっぱいになる。

弱みでも握られているのだろうか?

—-Yes!

過去の甘い思い出は本当は苦かった

十和子は、過去を無意識に脚色していた。

黒崎は、甘いことを言うだけの、口先だけで、やっていることは恐ろしい男だった。例えるなら羽賀健二……。

お金を貢がせる、働かせる、最後に別れ話がもつれたら、骨折するまで殴る男。

最低な男なのに、その男との話を美化して過去に生きている十和子。

なぜそうなってしまったのか?

もともと空っぽだった

過去も現在も、十和子は何も変わっていないのだ。

現実の自分には何もないから、夢想する。

空っぽだから、人の役に立つことばかりを考える。

そこに取り入る男たちは、一瞬でそんな空虚な女を見破って近づいてくる。

平凡なOLが、男の成功とその先の甘い生活を夢見てお金を出す。

平凡なOLだとしても、自分でやりたいことがあったら、そんな男には目を向けなくて済むのに。

他人のことばっかり構って、気になってしまう、という女性の一つの特徴でもある。

そして、彼の成功のためなら、なんだってやるとばかりに、冷静な判断がなくなっていき、借金返済のためにエロじじいに抱かれ、自己犠牲を尽くした暁には、ボコボコに殴られて、文字通り路上に捨てられる。

そんな彼女を拾ってくれるたのが、佐野さんなのだ。

空っぽには空っぽがくる

目には眼帯、片腕はギブスをして、お茶を出してくれた十和子に、一目惚れをする佐野さん。

そう、空っぽの不幸な女は、すぐに見つかってしまうのだ。

佐野が追っかけ口説きたおして、マンション購入したよと喜ばせて同居生活が始まる。

十和子はいつも憂鬱な顔のまま。

でも佐野は嬉しそう。

だって、佐野は不幸な女が好きなのだ。

笑顔になってほしいと言いながら、不幸な女を幸せにする自分が好きなのだ。

もしくは、不幸な人を救うことでしか、自分の価値がないと考えている無価値感の強い男である。

自分に自信のある男は、十和子を利用し、自信のない男も、やっぱり十和子を助けているようで、彼女を利用しているのだ。

ずっと家にいる十和子

自分が養わないと生きていけない十和子

自分だけの十和子

こわっ(笑)

2度あることは3度

黒崎のようなイケメン最低男と似たような軽薄男、水島が登場し、またもや引っかかる十和子。

スーツを着て、長身で、イケメンだけど、空っぽの男たちの言われるがままになってしまう。

こんなに尽くして我慢してるのだから、最後は幸せになるのよ、王子様が迎えにきてくれるのよ、といつまでもシンデレラ願望が抜けない。

本当のシンデレラは、もっと策略家なのに。

期待したことが得られないと、鬱屈した我慢が爆発して、ナイフでめった刺しにしてしまい、過去の記憶が戻るというエンディング。

この先、十和子はどうなるか?

イケメンに凝りて、命を投げ出してくれるほどに無償の愛を捧げてくれるブサメンと結婚すればよいのか。

そして子供ができれば、安泰なのか。

いやいや、彼女が自分自分の人生を何に尽くしていきたいかを考えないとカルマからは逃れられないのでは。

自分がやることを見つけて幸せになった先に、その幸せな雰囲気で繋がってくれる人が現れるまでは、彼女の苦行は続いていくと思われる。

Apsara

東京でアーユルヴェーダサロンを12年運営してきた元セラピストで、今はストリーライティングを仕事にしています。 映画・小説・ドラマ・占いなど、人の運命を辿るス...

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